よく晴れた海の日。買い物に出かけた店の近くで、両手にコップを持った少年と、その姉らしき少女が立っていた。「レモネードいりませんか」。慣れてない口ぶりで少年が繰り返す。ああ、なるほど、アメリカだったかな、子供が小遣い稼ぎにレモネード販売をするという知識はあった。「レモネードいりませんか」。姉の命令なのか、少年は声をかけてくる。けれど少年、残念ながら両手にコップを持っているだけでは不審者も同然。そこに屋台の体裁があったならば、せめてレモネード販売を示す看板を見せていたならば、もしかしたらレモネードは売れたかもしれない。あるいは、事情を忖度して、こちらから「そのレモネード、売り物?」と問いかけるべきだったのか。仮に1杯でも売れたなら、少年と少女のひと夏の冒険も実りのあるものになっていただろうか。さらなる次の一歩が踏み出せただろううか。勇気を出すべきだったと悔やまれる。

「カネ目当てで助けてくれる人が一番信用できる。せめて利害が一致していると分かった方が安心できる
「アナタの笑顔がみたいから」と助けてくれる人、この人のお気に召す笑顔を自分が出来なかったらと思うと俺は恐ろしくて安心できない」