樋口有介『笑う少年』(中央公論社)1700円+税
風町サエシリーズ第2弾。知らずに読んで、なんだかキャラクターの描写を唐突に感じる箇所が出てくると思ったら、シリーズ第1弾『猿の悲しみ』が未読だった。作者の本で、中年女性が主人公というのも初めてなら、殺人現場以外で暴力描写が出てくるのも初めてという気がする。弁護士事務所の調査員なので日本中を飛び回る、という描写も作者にしては珍しいかな。人気アイドルグループ事務所の謎が、やがて社会派に……というのは、まあ、好みの問題。名前だけ登場した、おそらく前巻にも出ている男性キャラと、同じく名前だけ登場して、この本ではついに顔を見せなかった女性キャラが気になる、という妙味。装画と「The lauphings boy」という英題に戸惑う。英題かー。ちなみに、先月文庫落ちした際、『遠い国からきた少年』と改題されていて、こちらはまた簡明直截に迫ったものだ。もっとも、表紙の装画は文庫のほうが無難な感じ。ともあれ、近いうちに『猿の悲しみ』を追いかけてみたい。

「「嫁に怒られました」「母親に怒られました」って口実は、戦後生まれの男性にとっては面子を潰さずに謝れる絶好の口実なんですよ。」