畑野智美『夏のバスプール』(集英社)1500円+税
第23回小説すばる新人賞受賞作家の受賞後第一作だそうで、受賞作は未読。
ああ、そういえばボーイ・ミーツ・ガールなお話だったね……という疲れた読後感。例えば樋口有介だと大丈夫で、この本だと頁をめくるのが億劫になった違いは何だったのだろう? 津原泰水の『ブラバン』ではオチに使われたキャラクターと似て非なる設定の同級生とか、結果的に可哀想な役どころとなった野球部とか、その辺かなあ。手に負えない方面はどうしようもないけれど主人公とヒロインは……という結末がちょっと物足りなかった。でも、こういう余韻も有りなのだろう。追いかけっこはリフレインしてたし。面白くなるかなあと思えてそれほど楽しめなかったのが残念。ああ、映像にしたら映えるんじゃないかなあという作風に感じたので、もしドラマ化でもされたら見てみたい。試みに検索してみると、能登麻美子の朗読というのがヒットしますな、どうしてだろう。

この本には東日本大震災が日付入りで登場していて、小説でこの名詞入りのを読んだのは初めてだったかもしれない。阪神・淡路大震災が登場した小説は……記憶に無いな。でも、読んでいても不思議ではないな、17年が経過しているのだから。そうそう、先日の冬至の辺りで話題になっていたマヤ文明由来の2012年人類滅亡説も登場していて、ネットのあれやこれやが思い出されて、でも出版当時では未来の不安な出来事だったのに、これから読むと全部過去の話題として受け取るんだろうな。タイミングの問題。

「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」

夏のバスプール

夏のバスプール