樋口有介『ぼくはまだ、横浜でキスをしない』(角川春樹事務所)1500円+税
幽霊と間違われた主人公が、幽霊を成仏させるお話。作者の過去のあの本この本から、寄木細工のように要素を組み合わせたかのような1冊で、贔屓の引き倒しだとしてもハッピーエンドが心地よい。それよりも、この本で印象的だったのは、今まで作者の本では見たことが無いようなブックデザイン。表紙・裏表紙・中表紙に目次、舞台となっている横浜らしき画像がふんだんに用いられて、編集の力の入れようが惜しみない感じ。各章にタイトルが付いているのも、もしかしたら初めての試みに思われる。表紙折り返しを見てみると、「ブックデザイン シイバミツヲ(伸童舍)」とあって、試みに検索してみると……機本伸司の本やアニメ化したライトノベル群の表紙を担当した人物だった。なるほどなるほど。

「電子レンジなんて数ある道具のひとつにすぎない、というのは理屈ではそうなのだけど「食べ物屋さんで使われてると萎える」という声は昔から根強い。だから飲食店では昔から「チン」という音が客席まで聞こえないようにいろいろ工夫していた。分解して音が出ないように改造するツワモノもいた。」

ぼくはまだ、横浜でキスをしない

ぼくはまだ、横浜でキスをしない