某所より。
「他の人が上位互換を作ってたとしても自分で作りたいって気持ちが創作なのだと思います」
講談社文庫の『モーツァルトは子守唄を歌わない』では、ベートーヴェンを神のように尊敬している少年シューベルトが「……それで時々、不安になるんです」「つまり……先生の……ベートーヴェン先生の後から出た作曲家に、一体、何ができるのかと……」と言って、驚愕したベートーヴェンが返答に窮する場面があったなあ。終盤、事件が一段落したかに見えた頃、シレーネの「やい、ベートーヴェン。私が歌えるような曲を書いてみろよ。ただし、明るいやつだぜ」という言い回しは、オペラ3部作のヒロインを彷彿とさせて懐かしかった。いや、出版の順番は逆なのだけど。漫画では、ちょっとおとなしめに、「私が歌える曲を書いてみろ!」「ただし明るいやつをね」と言い換えられていて、漫画家の苦心がうかがえる。

「なんか上の方に凄い教養の高みがあることは知っているんだけど、教養を得るために行く服がないみたいな調子で教養の周りをウロウロ不審者の如く徘徊するおっさんが概ね俺なのだという事実が俺の尊厳に強烈な空手チョップをキメていく…。」