外食先に本を持っていこう、カバーの付いている文庫本がいいな、と適当につかんで持ち出したのが松井千尋の『ダイスは5』。序盤、3人目が登場する辺りまで、綺麗さっぱりと忘れていて、新鮮な気持ちで読み返せるのが分かった。作者の『ハーツ ひとつだけうそがある』と登場人物がどこかで重なるのだったかな、そういう箇所だけ記憶に引っかかっている。

「何度も言いますが、これは「技術」ではなく、こういうパーツをこういうふうに設計してこうやって成形してやろう、という誰かによる企みです。意志であり、フェティシズムであり、思想です。それは変態的なものではなく、キャラクターを、立体的な意味で実直に解体し、再構築する試みです。結果として現出するパーツが「変態的」に見えることと、「変態が作ったもの」を混同したり、自分の理解の外にある恐ろしい何かを「卓越した技術」のせいにするのは、極めて危険なことです。この世のどこかで、誰かが、極めて真面目に、フミナ先輩のいろんなところを、プラスチックのパーツに還元している。私たちはそういう世界を生きている。祝福したいじゃありませんか。笑顔で生きましょう。プラモデルのある、この世界を。」